バツイチ美女と 御曹司

消え入りそうな声でそう言うとなぜか
ぽろぽろ涙が頬を伝わった。

「マリ、会いたかった」

そういうと裕はベンチに腰掛けて
マリを抱きしめた。

たった十日あまりの空白でも、二人には
途方もなく長い時間だったのだ。

心の空白を埋めることができず、
会いたくても会えない日々は命を
削っているようだった。

お互い少し痩せて目の下のクマも眠れない
日々を過ごしているのだと理解できた。

マリは何も話せなかった。

ただ裕の腕の中で裕のシャツを握りしめて
静かに涙を流し続けていた。

裕のシャツが涙で濡れてしまっている
ことに気づいてマリは慌てた。

裕はハンカチを渡すことも忘れてマリの
涙が、自分のシャツに吸い込まれるのを
感じていた。

マリの体温を自身の体で受け止めマリの
安堵を知って裕はうれしかったのだ。

二人は抱き合ってしばらく離れることが
できなかった。

裕はマリの存在を確かめるようマリの頭を
なでたり腕をさすったり背中をとんとんと
優しくたたいてくれた。

マリはそんな優しい裕が愛おしくてただ
裕にしがみついていた。