バツイチ美女と 御曹司

裕は部屋の中を探して回ったがマリの痕跡は
何一つ残っていなかった。

何日もかけて準備したに違いない。

昨夜のマリを思い出す。  

恥じらいながら甘えて裕を求める仕草も
初めてで、裕は簡単に舞い上がってしまったが、
マリは最後の夜のつもりだったのだと、
今では納得がいった。

裕はしばらく茫然としていたが、父親が
熱心に縁談を進めていたのを思い出した。

すぐに実家に電話をした。

椿が電話に出て、親父と変われと言う
ただならぬ裕のきつい口調に驚いた。

「どうしたの裕、何かあった?」

と尋ねる椿に、とにかく父親と変われと
しか言わない裕にあきれて父親に
電話を替わった。

心配で聞き耳を立てていたら、
マリさんは今日でやめてもらったと言う
父親の言葉に椿は茫然とした。

かなり裕は感情的になっているらしく、
円山花壇を引き継ぐ者がバツイチの嫁を
貰うなんて言語道断だと、大正時代の
ようなことを言っている父親にも
あきれてしまった椿だった。

「社長、マリちゃんが今日で辞めたって
どういうこと?
そんな事上司の私に何の報告もないって
おかしいでしょう?」