バツイチ美女と 御曹司

電話で優依は必死でそう言ってくれるけれど
マリの決心は変わらなかった。

「でも、社長の話では裕さんもまんざらじゃ
なかったということだった。
裕さんは優しいから私には絶対に切り
出せないと思う。もう決めたの。」

「頑固だからなあ、マリは。
一度決めたらてこでも動かないよね。
でも、私は裕さんがまんざらでもないと
言うのは社長の嘘だと思うけどね。
でも、どこに行くのよ」

と尋ねる優依に

「またパリかロンドンにでも行くわ。
そこなら、働くところ紹介してもらえるし、
心強いわ」

とマリはいった。

裕は真っ先に優依に行き先を尋ねるはずだ。

本当のことは言えない。

優依ごめんねと心の中で謝った。

「いつ帰って来るのよ!」

と優依は食い下がったけれど

「裕さんの事が素敵な思い出になったらね」

とだけ言った。

優依は電話の向こうで泣いていた。

「マリっていつもそんな役回りじゃないの。
もっと自分のことを一番に考えなさいよ。
マリの人生なのよ。
なんでいつも他人に遠慮してるのよ。
今時、バツイチが何だっていうのよ。
間違っていると思ったらいつだって
やり直せばいいんだから、それをとやかく
言われる筋合いなんてないわ。社長の頭は
明治大正時代で止まってんの?」