バツイチ美女と 御曹司

社長に言われてマリはその時が来たんだ。

夢から覚める時が来たんだと実感した。

マリは俯いて白くなるほど握りしめていた
両手にぽたぽたと水滴が落ちるのを見て、
初めて自分が涙を流しているのを知った。

「君を泣かせてしまって悪いけど
わかってほしい」

と心底申し訳なさそうに続けた。

社長もきっと優しい人なのだ。

裕の父親なのだから優しいに決まってる。

マリは目元を手で拭い顔を上げた。

「わかりました。
社長の言われるようにします。
でも今大きなブライダルの仕事があって
私がリーダーで動いているので、
そのブライダルが終わって後始末なども
きっちりとしてから、そっと裕さんの前
から消えます。
だからそれまでは仕事をさせてください。
それを中途半端に放り出してみんなに迷惑を
かけたくないので、お願いします」

とマリは頭を下げた。

「分かった。
ではそういうことでお願いするよ」

と社長も頭を下げてくれた。