「今、裕には縁談が来ていてね、お相手は
ホテルや旅館などリゾート施設の経営を、
世界的にされている企業の一族の
お嬢さんなんだ。
まあ現会長のお孫さんになるんだけどね。
先週裕にも参加させて見合いというほど
でもないけれど、顔あわせの食事会を
したんだ。
相手のお嬢さんはすごく乗り気でね。
会長も裕の事を気に入ってくれてね。
裕にその話をしたら、裕もまんざらでは
ないようだったんだが、マリさんという
人がいて結婚の約束をしているからと、
歯切れが悪くてね。
裕は優しいから、結婚の約束までしている
マリさんには別れてほしいとは言い出せ
ないと思ってね。
少し君の事も、調べさせてもらったんだ。
こういえばわかってもらえると思うけど、
離婚経験のある女性を円山花壇の跡取りの
嫁にはできないんだよ。悪いけど。
率直に言うと、裕と別れて円山花壇も辞めて
貰いたいんだ。
できれば、裕には何も言わずに離れてくれる
と一番助かる。
退職金という名目でお金は君の望む
金額を用意するつもりだ」

少し言いづらそうだったが、社長はマリを
じっと見据えて一息に言った。