バツイチ美女と 御曹司

「なんだ、あの野郎、なんでマリに
接触してくるんだ。
自分のせいで別れた事もう忘れたのか。
それにロンドンに行かせてやったとか
ちょっと自由にしてやっただけとか、
そんなこと言われる筋合いはない。
頭おかしくなってんじゃないか?」

と紘一がすごんだ。

「マリは青山にすぐにも移動させたいと
思っているんです。
本社ならいつもたくさんの人がいるし、
店に出ることも少ないので安心です。
それで、僕のマンションにマリと一緒に
暮すことをお許しいただきたくて
お邪魔したんです。
僕のマンションからは青山の本社に
徒歩十五分くらいで行けます。
もしそれでも梅原が接触してくるようなら
弁護士に相談しますし、警察にも
届けるつもりです。」

と一息に裕は話した。

兄も父もそうしてもらえば安心だと
言ってくれた。

裕と紘一が親しい友人関係なのも
あって父は反対しなかった。

本来なら実家に帰ってきてほしい
ところだが、実家から青山までは
結構時間がかかる。

毎日の事なら大変だろうと父も折れてくれた


これでマリの実家の方は反対もなく安心だ。

裕の実家の円山家はそうはいかないだろう
と思う。

とりあえず今は梅原の出方が分からず、
その対処に注力するのと、マリも
本社勤務で装花部の仕事に慣れなければ
いけないので、仕事を優先させたい
というマリの希望だ。

円山家に話を持っていくのはマリが
円山花壇である程度認められなければ
ならないだろうとマリは考えている。

裕にいえばそんな必要はないと
言うけれどマリにもプライドがある。

バツイチでそれでなくとも肩身が狭いので、
せめて仕事の面では裕の役に立つと
認めてもらいたい。

職場に近い裕のマンションに暮らさせて
もらえれば仕事の面でも助かるはずだ。

実家を辞した後、裕と二人で
マリのマンションに向かい必要なものを、
もう一つのスーツケースに詰めた。

もうすぐ七月なので、とりあえず夏物と
肌寒い日用に、薄手のジャケットと
カーデイガンなどを詰めた。

昨日はほんの三日間くらいの用意しか
もっていかなかったのだが、
クローゼットは冬物しか残っていない。