「女神、大丈夫か?急に動いてはいけない。」
「…いた〜い…、薬効かない、クラクラしてきた…」
女神は小さくて、白い額から冷や汗をたらしていた。俺がハンカチを取り出そうとしたと同時、女神は
ベンチに力無く横たわってしまった。
「おいっ、女神」
「…もうダメ。」
俺は女神を横抱きにして抱き上げた。
近付いてわかったが、女神はシャボンの香りがした。女神はもう、抵抗しなかった。
俺は女神にバレないように最大限の鼻呼吸で女神の
香りをたくさん俺の体内に入れた。
「女神、家は近いのか?」
「…駅までの途中にある橋の前の茶色のマンションです。1階がコインランドリーの…」
「それならわかる。そこまで運ぶから少しでも身体を休めていろ」
「…すみません」
女神は消え入りそうな声で答えたきり、瞳をとじた。
(まさか女神のマンションが俺の通勤場所とはな、)
ふむ。これはもはや、運命だ。
運命の赤い糸の相手に出会えるとは。
神に感謝だな。

