女神の部屋は良く言えばモデルルーム、悪く言えば生活感が全く無い、人が住んでいるのかわからないような部屋だった。

リビングの奥にあるグレーのソファーに女神を
そっと優しく降ろす。

「ありがとうございます、重かったですよね?」

「いや、軽すぎて驚いた。その小さな身体に羽でも隠しているのか?本当に飛んでいきそうな程だ。軽すぎる。」

「何言ってるんですかっ」

女神は控えめに笑った。

「…いたた、やっぱりまだ痛い〜」

「大丈夫なのか?ご家族の方は?」

「えっと、父は今九州に長期出張で母は離婚していません。兄弟もいないので、この家は今、私だけです。」

「…俺と同じだな」

「…っえ?」

「いや、とりあえずもう休むんだ。無理をしてはいけない」

「はい、ありがとうございます。こんな見ず知らずの私に優しくしていただいて…」
「あ、今更ですが名乗ってなかったですよね?」
「私、神崎 亜優(かんざき あゆ)です。」

(かんざき あゆ )
俺は女神の名前を心の中で噛み締めた。

「俺は、南紫音だ」