タイセツナモノ

高校に入り、私は笑顔を作って友達を作って楽しい日々を過ごした。
自分を偽って、友達に嘘ついて嘘を作って騙して。
正直、こんなことしてダメだと思っている。
でも、こうでもしないと…またあの日みたいに泣き叫ぶ日が続くから。なるべく、こうしないとダメだった。
「ねぇ、桃花ってさぁ」
「好きな人、いるの?」
…は?好きな人?
突然の問いかけに、私は固まってしまった。
「あれ、固まっちゃった?おーい、桃花ー?」
笑いながら、私の目の前で手をヒラヒラさせる。
「あ、えーっと…好きな人?いないよぉ、そんな人」
笑いながら答える。
「えー?いそうなのにー!」
友達も笑いながら、言う。
私が?好きな人?いやいやいや、そんなわけない。だって、頭悪くて運動神経も悪くて陰キャな隅っこによくいる寝ているやつだよ?
私が、モテるとか…絶対ない!
「いないからー」
「嘘つくなー!」
「嘘ついてないもーん!」
もちろん、これは全部本当。
「え、でもさ桃花って…」