翠くんは今日もつれない【完】

あたしの渾身の威嚇が効いたのか逆ナン女達はお互い顔を見合わせると「そ、そうなんですね〜。失礼しました~」とそそくさ退散していった。


ふんっ、小娘どもが。
うちの翠くんに近付こうなんて、100年早いわ。


去っていく逆ナン女達の背中に向けて、あっかべーをすると「ふっ、」と吹き出した声が頭上で聞こえた。

見上げると翠くんが肩を震わせて笑っている。



「助けてあげたのに笑うなんて酷いよ~!」



唇を尖らせて翠くんに対して怒った。だけど、当の翠くんは「ごめん。ごめん」と口では謝ってはいるけど、可笑しそうに笑い続けていて。


もう、翠くんってば、全く謝る気ないじゃんっ!


翠くんの態度に不機嫌になって、むすっと頬に空気を溜めると、突然、翠くんの綺麗な顔が近づいてきて、お互いの唇が重なった。

途端に、あたしは怒りを忘れて、顔を赤らめる。



「なっ、いま、キスしてっ」

「前、散々したじゃん。キス」

「いや、そうだけどっ、そうなんだけどっ」



あれは熱で、あたしもちょっと、おかしくなってたというか。

じゃなきゃ、あんないっぱい、キスしな───。



「っ、」



あの日のことを思い出すと、あたしの顔は更に熱を帯びた。

どくり、どくり、と心臓が早鐘を打ち続ける。