声に出さないだけで、似たような状況に置かれているひとって案外たくさんいるのかもしれない。


先輩の気持ちがよくわかる。だけど知らなかったし、気がつかなかった。私の話をやさしく聞いてくれていたそのこころの中では、同じような痛みや寂しさを先輩が抱えていたなんてこと。


だから先輩に話を聞いてもらうと、こころが軽くなったのかな。私と同じ立場にいたから。

いや、でもたぶん、それだけではない気がする。やっぱり先輩が、私の知っている中で誰よりもやさしいひとだから。それがほとんどだったと思う。



「じゃあもしかして、私たちずっと似た者同士だったってことですか?」

「まー……そうだね」

「先輩も同じだと思うと、急に強くなった気分です」

「ううん、ひおは強いよ、最初から」



先輩は立ち上がって、またブランコに腰かけた。だけど目は合わないで、先輩はずっと下を向いている。



「え、全然!? 弱すぎるから、いつも先輩の前で……」

「俺は、〝相手のため〟って、結局自分の気持ちを伝えることから逃げてるだけだから。どんな成り行きにしても、ちゃんと伝えられたひおの方がよっぽど強いし、偉いよ」



だから、どんな顔でそう言ったのか、わからなかった。



「……先輩は、やさしすぎるんだよ」

「はは、ひおにはそう見える?」

「見えるし、絶対先輩の好きなひとだってそう思ってますよ。あれです、困らせたっていいんじゃないですか、その、好きなひとのこと」



でも、なんとなく。先輩の声はいつもより弱々しかった。たぶん、わかる。私と同じように寂しい気持ちで胸がいっぱいなんだって。

だから先輩がしてくれたみたいに、私も先輩の助けになれたらなって思った。



「……そうだね、まぁ、いつかは伝えないとな」

「じゃあ、私応援し、」

「でもそれは、今じゃない」



だけど先輩は、まるでそんなことは望んでいないように見えたんだ。