「……バイト、終わったらあそこ行きたいです」

「うん、いいよ。行こ」



その言葉ひとつで安心して、今だけはなんだか大丈夫なような気になる。

涙がこぼれ落ちないように指ですくった。まだバイト中だ。泣いてしまったら化粧がボロボロになってしまうし、みんなに迷惑をかける。だからせめてあと数時間は耐えなければ。



「ありがとう先輩」

「ん。じゃああとちょっと、頑張れそう?」

「頑張ります」

「偉い偉い」



そういえば、こうしてちゃんと先輩と話をするのは文化祭の日以来で。あの日は先輩にハグをされて、ちょっとだけ気持ちが忙しくなったけれど、今はもう平気だ。

それに先輩もいつも通りに話してくれるし、目もきちんと合う。だからあの後目が合わなかったのは、私の気のせいかもしれないと思えた。

先輩が妹さんと同じように接してくれること、私にとってそれは感謝でしかないのだ。







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「先輩、何飲みますか」

「いいよそんなの」

「だめです。今日はいっぱい聞いてもらうつもりなので!」

「はは、そうなの。じゃあお言葉に甘えて」



バイトが終わり、約束通りいつもの公園へ。自販機の前で先輩に尋ねれば、「いちごミルクがいい」とお願いをされたのでボタンを押した。ガコンと出てきたいちごミルクは、とても可愛らしいパッケージをしていた。



「美味しいんだよね、それ」

「ほんとですか? じゃあ私もこれにします」



先輩の言葉に釣られて、再び同じボタンを押す。同じピンク色を手に持った私たちは、いつもみたいにブランコに座った。



「ありがとう、ひお」

「いやいや、先輩から貰ってきたものに比べたらこんなの小さすぎます」

「そんなことないよ」

「……じゃあ先輩、聞いてくれますか?」

「うん、どうしたの」

「あの……」



いちごミルクをひと口飲んで、それから。

数日前に起こった出来事をありのまま話した。改めて言葉にすると、やっぱり後悔が押し寄せる。

そんな私の隣で先輩は、「うんうん」とただやさしく話を聞いてくれていた。