願うなら、きみが






それから少しだけ先輩と話してから、お互い自分のクラスに戻った。自分の仕事をして、終わってからはクラスメイトの子と一緒に行動した。

そうしてあっという間に1日が終わった。

初めての文化祭1日目は、終わってしまうのが寂しく思うくらいにずっとワクワクしていた気がする。浴衣もあーちゃんとのお揃いも縁日も、それから先輩とのツーショットも、全部楽しかったから。



そして2日目の今日は、朝からずっとあーちゃんと一緒。1日自由時間だったので、仁先輩がいる時間帯を狙って先輩のクラスにお邪魔した。美男美女揃いの先輩のクラスは、どこのクラスよりも賑わっていたように思う。

由真先輩とはシフトが被っていなかったようで、先輩のコスプレ姿を見ることはできなかった。だけど仁先輩のドラキュラの格好を見たあーちゃんがすごく嬉しそうだったので、それで充分に満足だ。





──「じゃあまた打ち上げでねっ」

「うん、また明日」



そして現在夕方。一般公開が終わって、これから後夜祭が始まる。

あーちゃんは仁先輩と過ごすので、待ち合わせの場所に向かっていった。明日明後日と振替休日で、明日はクラスのみんなで教室を片付けた後、打ち上げがある。あーちゃんに次に会うのは明日の片付けの時だ。


あーちゃんと別れて廊下を歩く。ひとりだし、後夜祭にはそれほど興味がないので、このまま帰ることにした。

だけど下駄箱へ向かうために階段を降りる寸前、とあることが浮かんで、足を止めた。


──星谷くん、まだ残ってるかな。


そう思ったのは、今日あーちゃんから言われた言葉が原因だ。


『好きなひととふたりきりで後夜祭の時間を過ごすと、その恋は叶うらしいよっ』


よくあるジンクス。

べつに、それをしたからって簡単に叶うのものだと本気で思っているわけではない。


だけど今日みたいな、いつもと違う1日の終わりに、ほんの少しだけ期待をしてみたくなった。


彼が今どこにいるのか。心当たりはひとつしかない。だからそこにいなければ、すぐに諦めて帰るつもりだった。


階段を降りずに、その場所へ向かう。校舎の奥へ行くほど静けさが増す。


そして辿り着いたそこ、図書室のドアは開いていた。中には書道部の作品が展示されたまま。

1歩ずつ進めば、ひとの気配がして。だけどそこで立ち止まったのは、声が聞こえたからだ。



「──先生、まだ一緒にいて」