願うなら、きみが






──「ひおりん、休憩してきていいよ!」

「うんっ、ありがとう」



お昼過ぎ。本来なら1時間半で次のグループと交代なのだけれど、軽音部の子がトラブルがあったとかで急遽部活の方に行かなくてはならなくなったため、その子の代わりにシフトを延ばすことになった。


「ごめんねぇ〜」と申し訳なさそうに謝られたのだけれど、あーちゃんは仁先輩と過ごすし、私的にはむしろちょうどよかった。何より、接客楽しいし。


だけどさすがにぶっ通しは、とクラスメイトの子が気を遣ってくれて、今私にだけ30分の休憩をくれたところだ。


教室を出ると、廊下にはひとがたくさん。うちの生徒はもちろん、他校の生徒や中学生など、いろんなひとでいっぱいだ。

とりあえず飲み物買いたい、と自販機に向かおうとすれば、背中をつんつんとつつかれた。


振り返るとふたり組の男の子。制服を見るに、うちの生徒ではない。



「ねぇねぇきみ、何年生?」

「えっ……」

「よかったら案内してほしいな」

「えっと……どこに行きたいんですか?」



他校の生徒だし、目的地に辿り着かなくて困っているのだと思ったから、立ち止まってそう聞いてみたのだけれど。



「まぁ、とりあえずこっち来てよ」

「、え、ちょっと、」



腕を掴まれてしまって、その瞬間になんとなく気がつく。このひとたち、絶対に困っていないって。

だけど男の子の力に勝てるはずもなく、引っ張られるままに歩くしかない。どうしよう、とこころの中で焦りながら歩いていると、突然掴まれていない方の腕が、もふもふしたものに捕まった。


そのせいで足は止まるわけで。そして私が止まったことにより、私の腕を掴む男の子も、その隣を歩く男の子も歩みを止めた。


「急に止まらないでよ」と言った男の子の声を正面で受ける前に後ろへ振り向く。



「え……」



そうすればそこには、パンダが立っていた。