願うなら、きみが






──「愛未ちゃん陽織ちゃん、やっほー」

「仁くん! 由真先輩もー!」



文化祭が始まってあーちゃんと当番の時間、由真先輩と仁先輩が遊びに来てくれた。お客さんがいなくなった時だったので、ちょうどいいタイミングだ。

仁先輩がドアの外からひらひらとこちらに手を振ってくれている。ふたりが来てくれるというのは朝あーちゃんから聞いていたから、特別驚きはしなかった。

それにしても、先輩たち目立つんだよなぁ。なんかこう、オーラがキラキラしてるって言うのかな。その証拠に、一緒に当番をしているクラスメイトたちがちょっとざわついている。

だけどあーちゃんはそんなことお構いなく仁先輩の元へ向かっていったので、私も教室の入口へ。



「てか浴衣かわいーね。ふたりとも似合ってる」

「でしょっ? 今日は陽織と双子なのっ」

「あ、ありがとうございます」



私とあーちゃんが並んだ瞬間、そんなことをさらりと言えてしまう仁先輩。すごいなぁ、と思いながらお礼を言う。お世辞でもなんでも、かわいいって言われるのはやっぱり嬉しい。これも全部あーちゃんのおかげだ。



「ひお、おはよう」

「先輩、来てくれてありがとうございます」



由真先輩と目が合う。あーちゃんと仁先輩はもうふたりの世界に入ってしまったので、必然的に私と由真先輩だけの世界が生まれた。

先輩は教室の中をぐるりと見渡している。



「すごいじゃん。本物のお祭りみたい。遊んでっていーい?」

「すごいでしょ? 遊んでってください」



まだ制服のままの先輩たち。コスプレ喫茶、一体なんの格好をするのだろう。後でこっそり見に行こうかな。事前に先輩に言ったら、恥ずかしいからやだとか言われそうだし。



「ねぇ、ひお」

「はい?」



頭の中で先輩に色んな格好をさせていれば、隣から名前を呼ばれて。返事をすると、先輩の顔が耳元まで近づいてきた。



「この中にひおの好きなひと、いる?」