願うなら、きみが






髪型だっていつもと違う。アレンジしてもらったようで、全体的に巻かれていて前髪もセンターで分けられている。


う……えぇ、かっこいい……。

こころの声が無意識に漏れていないか心配だ。



「そんなこと思うわけないじゃん……! うん、すごく似合ってるよ」

「ほんと?」

「ほんとに、似合ってる」

「……ならよかった、ありがとう」



あぁ、早くこれ、あーちゃんと共有したい。あーちゃん早く戻ってこないかな。でも、まだ星谷くんとの会話も続けていたい。

わぁ、贅沢な悩みだ。



「黄色にしたんだ」

「え、あっ、うん……」

「やっぱ似合うじゃん」

「っ、あ、ありがと」



いつもと違う星谷くんを目の前にして心臓がしんどいのに、さらに攻撃を受ける。

似合うだって。嬉しい、嬉しすぎる。

褒め言葉を受け取ってしまえばなんだか恥ずかしくなって、真っ直ぐに顔が見れなくなってきた。



「……星谷くんは今日、誰かとまわるの?」



だから誤魔化すように、話題を変えた。星谷くんが誰とまわるかなんて、大体予想できるのに。たぶん、同じクラスの竹内くんだ。



「まぁ、そうだね」

「そっか」

「八代は? 間中さん?」

「あーちゃんはね、今日は彼氏と一緒なんだ」

「へぇ、そうなんだ」



そう、今日は仁先輩と。だけど明日は、後夜祭の時間までは一緒にいられることになっている。

いいなぁ。好きなひとと文化祭とか、めちゃくちゃ憧れる。


もちろんそれはあーちゃんの頑張りの結果であり、私も頑張ればいいだけの話だ。まぁ、実際それがかなり難しかったりするのだけれど。


今はこのままでいい、だなんて呑気に思っていたら、あっという間に卒業の日を迎えてしまいそうだ。

わかっている。何かが起こるのを待っているだけではだめだということは。そろそろ私も、あーちゃんみたいに動き出さなければいけない。


だけどどうするべきなのか、星谷くんを目の前にしてすぐに答えを出せるほど、考えも自信もなかった。