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『まぁまぁ、次から気をつければ大丈夫だからさ。そんな顔しないで、ねっ?』

『はい…………本当にすみませんでした……っ』



バイト中、今月から入ってきた新人の女の子の八代さんがどうやらミスをしたようで、かなり落ち込んでいた。


お客さんも全然怒っていなかったし、店長が『大丈夫大丈夫』ってなだめても、ずっと浮かない顔をしている。


あまりにもそれが続くから、仕事中に泣いてしまうのではないかと、そればかりが心配になった。きっと泣かれたらお客さんも店長も困ってしまうと思ったから。でも気持ちはわかる。最初は俺もミスをすると落ち込んだ。八代さん程ではないが。


だからその後は、どうか泣き出しませんように、と。そう思いながら仕事をしていたけれど、結局八代さんが泣くことはなかった。思っていたよりも強い子だったみたいで安心した。


それからは何事もなく業務をこなし、いつも通りバタバタと忙しくしていれば上がりの時間になって。

更衣室兼休憩室に入ると、ちょっと前に上がっていた八代さんもちょうど着替えようとしているところだった。



『お疲れさま、です』

『お疲れさまでーす』



なんとなく、顔を覗いてみる。


まだ落ち込んでる? でも、泣きそうな感じはなくなった? ていうかこれ、なんか声掛けた方がいいのかな。一応先輩だし?



『先、どうぞ』

『どーも……あ』

『はい……?』

『八代さん、泣くと思ってた。でも泣かなかったの、偉かったね』



偉かったねって、上から目線すぎた? まぁ、いっか、と思っていると、八代さんの目に涙がどんどん溜まって。そのまま堪えきれず、大粒の雫がぽろぽろと溢れた。今まで我慢していたものを解放するみたいに。

やばい、と思ったけれど、涙は止まることなく頬を流れる。

だけどその様子を見ていると、急に小学生の妹の顔が頭に浮かんだ。そういえばあいつも、泣く時はいつも我慢して我慢して、最後に大量の涙を流すなぁって。そう、今の八代さんみたいに。


すると途端に、目の前で泣く八代さんがかわいく思えてきた。