願うなら、きみが






かっこいいひとに言われるそれは、相手のことが好きとかそういうのに関わらず破壊力があるもので。

先輩はきっと、無意識に女の子を落としちゃうタイプのひとだと再認識する。だけど私は大丈夫ですよ先輩、勘違いとかしませんから。


それに、もう別のひとに落ちちゃってるし。



「勝負だし、負けたからなんか好きなもの買ってあげる」

「えっ、私そんなつもりじゃ、」

「1回しか言わないよ?」

「う……じゃあ……あそこのアイスが食べたいです……!」

「ん、食べよ」

「わーい! ありがとうございます」



すぐそこにアイス屋さんが見えたから。ついまた、先輩に甘えてしまった。


先輩はチョコ、私はストロベリー。ベンチに座ってちびちびと食べる。だけど日差しがまぁまぁ強いので、早く食べないとすぐに溶けてしまいそうだ。



「あーちゃんたち、上手くいくといいですね」

「ね。でも今頃イチャイチャしてんじゃない」

「じゃあこのままふたりきりにしてあげた方がいいかな」

「そうしよっか」



ということはつまり、残りの時間先輩は私と過ごすことになるということだ。いいのかな、先輩。

そう思っていると、「ふたりでゆっくりしよ」と言ってくれたのでほっとした。私は先輩と過ごす時間が好きだけれど、先輩も同じ気持ちでいてくれていると思っていいかな。



「はーーー、それにしても最初はちょっと私も緊張してました」

「え、なんで?」

「だって先輩たちの中に混ざるのって、あーちゃんがいたって結構気合いいるんです」



先輩の隣。安心して、本音がついこぼれる。

美男美女の中に混ざるにあたり、一応いつもよりはお洒落をしてきたつもりだ。朝の待ち合わせであーちゃんが『かわいい』と言ってくれたのでとりあえず安心したけれど、もちろんあーちゃんの方がずっとかわいいわけで。

今でも変じゃないかなと、ちょっとだけ不安だったりする。



「そうなの?」

「しかもこういう、男のひとと少人数で遊ぶのとか初めてだし……?」

「今まで彼氏は?」

「彼氏はいたことあるけど、デートはしないで別れちゃいましたっ」

「え、そうなの」

「あ、でもあれですよ、チューくらいはしたことあります!」



そう言えば、先輩は私から目を逸らした。いけない、チューとか、こんな場所で放つ言葉じゃなかったかもしれない。