でもやっぱり先輩はやさしいから、例え私が行かないって言っても、あーちゃんたちにお願いされたらひとりでもついて行きそうな気がする。
そんなことを言えば、先輩はきっと否定するんだろうけれど。
「先輩、やさしー……」
「そんなことないよ」
先輩は仁先輩からこの話を聞いた時、どう思ったのだろう。どんなふうにお願いをされたのかな。だけど承諾したってことは、つまり。
「ねぇ先輩、私たちって今、同じ気持ちってことでいいんですよね?」
「ん?」
「OKしてくれたってことは、少なくともあーちゃんを応援してくれてるってことでいいんですよねっ!?」
「あー……あーちゃんをっていうか、あのふたりを?」
「え?」
「あのふたりがくっつくの、時間の問題だし」
「え……てことは、仁先輩もあーちゃんのこと……!?」
「あ、内緒ね、これ」
しー、と。先輩が人差し指を立てる。
だけどそんなことを聞いて、落ち着いていられる私ではない。
すごいすごい、すごいよあーちゃん。
今すぐにでもあーちゃんに教えてあげたいところだけれど、たった1度の楽しみを私が奪うわけにはいかないので、それはしないでおく。
「すごい! わくわくしてきた!」
「でしょ? でもだからこそ、ふたりで行けばいいのにね、デート」
「デート……」
だけど、わくわくしたのも束の間。先輩から放たれたデート、という単語を聞いて簡単に思い出してしまった。
『デートの相手って、八代の好きなひと?』
あぁ、好きなひとからの言葉って、良くも悪くもすごいな。
だって一瞬で感情を変えてしまうんだもの。
今はあーちゃんたちのことを喜ばしく思いたいのに。あの時の星谷くんとの会話を1度思い出してしまえば、じわりじわりと虚しい気持ちが込み上げてきて。
今じゃないのに。絶対、違うのに。
あっという間に、泣きそうになった。


