それはつまり、私を恋愛対象として見ていないということで。だからそんなことが言えるわけで。
だけど私は、違う。私が星谷くんのことを知りたいのは、星谷くんが好きだからだ。決して彼の恋を応援したいからではない。
それが私と星谷くんの、違うところ。
わかっている。また棘が刺さる。
でも痛みを感じている場合ではない。早く言葉を返さなければ、星谷くんに不思議に思われてしまう。
じんわりと痛みが広がっていくのを気づかれないように、まずは口角を上げて。
それから目にぐっと力を入れて、なるべく笑ってみせた。
「はは、応援してくれるの?」
「まぁ、そりゃあね」
「嬉しいけど、残念ながら好きなひとはいませーん」
嘘。全部嘘。
全然嬉しくない。好きなひとだっている。それも、目の前に。
ねぇ、好きって言ったらどうする? 星谷くんの恋を応援していないって言ったらどうする?
知りたいなんて言ったけれど、本当のことを知ったら困るでしょう?
わかっている。彼に私の矢印は、見えていないことくらい。だって、見えないようにしているのは私だから。
「そう、いないんだ」
「うん、いないいない。あー、恋したいな……なんて」
「……見つかるでしょ、八代なら」
「え?」
「いいひと、見つかるといいね」
ちくり、また刺さる。だけど余計なひと言を言ったのは私。こんなの、自ら傷つきに行っているようなものだ。
「……うん、ありがとう」
あーあ、馬鹿だなぁ。上手く笑えているのかも、もうわからなかった。
きっと気を遣ってくれているのだろう。あーちゃんはしばらく戻ってこなくて。
だけどこの時ばかりは、早く戻ってきて、と思ってしまう自分がいた。


