願うなら、きみが






「ほんとほんとっ! 大丈夫だよ!」

「ならいいけど……」



だけど私の心配はよそに、あーちゃんがニコニコ笑いながらそう言うから。ここはあーちゃんの言うことを信じるしかない。



「ねねっ、どっか行きたいとこない?」

「それはあーちゃんたちにお任せするよ」

「そう? じゃあ仁先輩と相談してみるねっ」



あーちゃんはスマホを取り出して文字を打ち始めた。きっと仁先輩にメッセージを送っているのだろう。

いつになるか、どこへ行くかは未定だけれど、簡単に4人で遊ぶことが決まってしまった。これであーちゃんの恋が前進したらいいなぁと思うのと同時に、今からもうすでに緊張に襲われる。

だっていくら仲良しの友達が一緒だからとはいえ、男の子と遊ぶだなんて。しかも学校の先輩と。


由真先輩と仁先輩。あーちゃんは可愛いから大丈夫だろうけれど、私がそのふたりと休日に出かけるとか、女の先輩たちに知られたらそれはもう睨まれてしまうどころではないだろう。


大変だ。みんなに釣り合うように、ちゃんとしていかないとだ。



「ねねっ、陽織」

「ん」

「由真先輩となんかあったりしちゃったりするかもよ?」

「、んぐっ」



心の中で決意したところに、あーちゃんが急にそんなことを言うものだから。口に含んでいたミルクティーを思わず吹き出してしまいそうになった。

慌ててごくりと飲み込めば、かわいくない声が漏れる。



「な、なんでよっ」

「だって由真先輩めちゃめちゃ良くない?」

「いやいや、先輩は確かに素敵なひとだと思うけど、だからってべつに何も起こらないよ?」

「え〜ほんとにぃ〜?」

「ほーんーとー! それに私好きなひといるもん……!」



じーっとあーちゃんを細目で見つめれば、「まぁ、そうなんだけどさー」と口を尖らせる。その顔も可愛いけれど、違うものは違う。

先輩と私に何かあるだなんて、まず先輩に失礼だ。先輩が私のことをそんな目で見るはずないし、そもそも私のことは小学生の妹さんと重ねているわけで。



あーちゃんのそれは、見当違いでしかない。