ていうかあーちゃん、待ってほしい。

そんなことを言っているけれど、私、仁先輩とは軽い挨拶をした程度だ。あーちゃんだって由真先輩とはそれくらいのはず。

なのにその提案は、ちょっとぶっ飛びすぎなのでは……? まぁ、あーちゃんが考えそうなことではあるけれど。



「待って待って、ついてきてって……」

「だってぇ……ふたりだと緊張して上手く喋れないよ」

「でも一緒に帰ったりしてるじゃん。その時は話せるでしょ?」

「それはそれ! 今度のはあれだもん、デートみたいなものだもん……」

「えぇ……」



由真先輩はやさしいから、きっと誘われたら断らないだろう。そうなれば私も行くしかなくなるわけで。

4人で遊ぶとは言っても、必ず向こうで2対2になる場面が出てくる。そうなった時、私とふたりきりにされてしまう先輩にとても申し訳ない。



「お願い〜陽織ぃ〜」



でも、あーちゃんの頼みだ。友達の恋はできる限り応援したいという気持ちもある。


これは一体、どうするべき……



「由真先輩ね、陽織がいるならいいよって言ってくれてるんだよね〜」

「えっ」

「だから、ねっ? お願い! 1回だけだからっ!」



なんと、すでに先輩には許可を取っているようだ。これはやられた……仕事が早すぎる。

どうやら最初から、選択肢はひとつしか無かったらしい。



「……わかったわかった。でも、今回だけだよ?」

「やん! 陽織大好きありがとうっ!」



もう〜と思うけれど、嬉しそうにあーちゃんが笑うから、結局まぁいっか、と思ってしまう。私は可愛い女の子の笑顔にころんと落ちてしまうタイプなのだろう。我ながらちょろい。




ふたりのデートについて行くのは、もういいとして。ひとつだけ心配なことがある。



「でもさ、あーちゃん……先に言っておくけど、私そういうの慣れてないから、上手くフォローできないかもだよ?」

「全然大丈夫! いてくれるだけでめちゃくちゃ助かる!」

「ほんと……?」



そう、私はあーちゃんとは違って、男の子と休日に出かけたりした経験は無いに等しい。

小学生の時に大人数で鬼ごっこをしたりして遊んだことはあるけれど、さすがにそれはカウントされないし。

中学生の時に彼氏がひとりいたけれど、デートというものをせずに別れてしまったし。


そんな私が、ふたりのデートにちゃんとついて行けるのだろうか。