願うなら、きみが






「先輩、観覧車乗りたいです」

「いいよ、乗ろ」



そろそろ日が暮れる頃。飲み物も飲み終わって次どうするか話していると、ひおからリクエストをされたので早速向かった。

カラフルなゴンドラ。ピンク色の箱に乗って「かわいい〜」とはしゃいでいるひおが可愛い。


ふたりきりの空間になって、気がつかれないようにこっそりと深呼吸をした。それでも心臓が速く動く。この感覚は、ひおに気持ちを伝えた時以来だ。

密室に好きな子とふたりきりだから、だけが理由じゃない。今日、ひおに伝えようと思っていることがあって、半分はそのせいだ。


俺は今から、もう1度ひおに告白をする。


というのも、気持ちは伝え合ったけれど、恋人同士になったわけではなくて。ひおから返事を貰った日に、これもまたひおが『これからのことは、先輩の色々が終わってから話しましょう』と、言ってくれたのだ。

たぶん、気を遣ってくれたのだと思う。


受験も終わって、進路も決まって、ようやくこれからのことを話すことができるようになって。いつ言おうと朝からタイミングを考えていたけれど、完全にここだ。


1周およそ15分。その間に、ちゃんと言う。



「今日楽しかった?」

「楽しかったです! 動物見れたし、乗り物も乗れたし」

「よかった」

「先輩は?」

「楽しかったよ」

「ほんとに?」

「ほんと。つまんなそうに見える?」

「見えないですけど、先輩の方が私より楽しくないと困ります」

「なんでよ」

「一応その、先輩へのプレゼントなので」

「なるほどね」



そんなことを言ってくるひおが、また可愛くて。「年明けてからいちばん楽しかったよ」と本心を言えば、ひおは満足そうに笑った。