願うなら、きみが






2月末。受験が終わって、無事志望校にも合格して、あとは卒業を待つだけになった。時間が経つのはあっという間で、だけど高校生活の終わりがすぐそこまで来ているという実感はまだなくて。



「ん〜! 美味しい!」

「よかった」



今だってすぐ隣にひおがいて、この日常がずっと続くのではないのかと思ってしまう。


昨日まで曇り空が続いていたけれど、今日は快晴。ここのところ、良いことばかりしか起きていない気がする。



去年、模試でA判定だったらふたりで出かけてほしいとお願いをして、見事そのご褒美を獲得したものの、結局なんだかんだで忙しくて、そうしている間にも受験の日が近づいていって。

そしたらひおの方から、受験が終わってからにしようと提案をしてくれた。で、合格発表がついこの前終わり、ようやく今日こうしてふたりで遊びに来ているというわけである。ここは以前、仁とあーちゃんと4人で来たことのある施設だ。


その時ひおは、星谷くんのことが好きで。俺はひおに片思いをしていて。自分の気持ちを伝える未来なんて全然見えていなかったのに。

こうして今、ひおとふたりでここにいる。それが単純に嬉しいなと思うし、正直それだけで満たされている。



「先輩も飲みますか?」

「いいの?」

「期間限定ですよ! 飲まないともったいないです!」



さっきまで動物を見ていて、今はベンチで休憩中。甘そうなチョコレートドリンクを、ひおの手から受け取る。


ひと口飲んで、やっぱり甘いなぁなんて思っていると、「あ」とひと文字が、隣から聞こえてきた。



「ん?」

「あ……いや……」

「どした?」



なんて、なんとなくわかっている。



「その……間接……」

「あー、ほんとだ。ごめんね?」

「いえ、こちらがごめんなさい……」



恥ずかしそうに目を逸らす。そんなひおが可愛くて。この顔を、ずっと隣で見ていたいなんて思った。