「あぁ、中学の後輩。高校まで一緒とかね。最初会った時はびっくりした」

「中学の、後輩……」



やっぱり、前からの知り合い。ただの名前だけ知っている後輩とかではないだろうな。だって、ちゃんと仲良さそうだったし。あの子は先輩にとって、特別な後輩なのかもしれない。


先輩の、特別。

比べるものではないとわかっているけれど、勝手に比べてしまう。


先輩はあの子にも、私と同じようにお菓子をあげたり、やさしくしていたのかな、なんて。



「ひお? どうした?」



ふたりの中学時代を想像していれば、先輩に顔を覗かれて目が合った。考えていたことを慌てて頭の中から追い出す。

いけない、このままでは様子が変だと疑われてしまう。



「あ……いや……さっきの子と、仲良さそうだったな〜って」



「はは」と笑って誤魔化して。とりあえず、いつも通りの感じを装う。

……はぁ、やめよう、考えるの。考えたところで、何にもならないし。

それよりも私には、他にするべきことが──



「あー、仲良いっていうか、中学の時のクラスメイトの彼女なんだよね」

「えっ」



だけど耳に届いたその言葉で、曇っていた気持ちが一瞬にしてさーっと晴れていく。


クラスメイトの、彼女。

それを聞いて、やっぱりどこか安心してしまう自分がいた。



「ちなみに今も続いてるらしい。長いよね」

「そ、それはすごいです」



なんだ、先輩を狙っているわけではなかった。

ほっとしてようやく余裕ができて、さっきの自分の行いを悔いる。だって、完全にふたりの会話の邪魔をしてしまった。これでは最高に嫌な先輩だ。

もし今度会えたら、謝らないと……。



「そういえばひお、急ぎの用事でもあった?」

「、え」

「さっきなんかそんな感じしたけど」

「あー……えーっと……」

「違った?」



思わぬ問いかけに、焦る。

もちろん違くない。でもいざとなると、それを説明するためのこころの準備ができていないことに気がつく。

あーちゃんと八田くんに仕事を任せて、文化祭の準備を抜けてきたくせに。



こんなんじゃ、だめだ。