願うなら、きみが






「じゃあしっかり応援しますね」

「とりあえず模試頑張る」

「今週ですもんね」

「ひお、覚えてる? 約束」



第一志望でA判定が出たら、先輩とお出かけをする。忘れるわけがない。だけどそんなことが先輩のモチベーションに繋がるなんて、こちらとしてはやっぱりくすぐったい気持ちになる。



「も、もちろんです」



私の返事に「よかった」と笑った先輩の顔を見て、ふと思った。私はあと何回、先輩のそういう顔をこの距離で見られるのだろうかと。


卒業の日は、ずっと先だと思っていた。だけど今は9月で、もう残り半年も無い。こんなふうに毎日を過ごしていたら、あっという間に先輩はここからいなくなってしまう。


大学なんて、高校とは比べ物にならないくらいに大きくて広くて、ひともたくさんいて。そこで先輩は色んなひとに出会って、先輩のことだからきっとものすごくモテて。


私なんかよりも、きっといいひとが──



「ひお? どうした?」

「あ、いや……なんか、早いなって……先輩はあっという間に受験で、それが終わったらすぐに卒業しちゃうんだなって……」

「あー、ね。早いよね、もう半年切ってんだもん」

「先輩が卒業するの、想像できないです」



想像できなくたって、その日は必ずやって来る。それを初めて実感した途端、今まで無かった感情がぽこぽこと浮かんできた。


私は、全然わかっていなかったのかもしれない。



「ひおにこうやって会えなくなるの、寂しいな」

「……」

「なーんて、会おうと思えばいつでも、」

「私も」

「ん?」

「……私も、先輩に会えなくなるのは寂しいです」



先輩にノーと答えを出すことが、どういうことなのかって。



「なに、ひお。俺それ喜んじゃうけど、いいの?」

「あ……えっ、と……」

「じゃあ勝手に喜んどくね」



先輩の寂しいと、私の寂しい。

同じものかどうかなんて、どうしたらわかるのだろう。