願うなら、きみが






「美味しい?」

「……美味しいです」

「でしょ?」

「もしかしたら、1位更新かもです」

「え、そんな美味しかった?」



うんうん、と頷く。それを見て先輩は、嬉しそうに笑った。今度は反対に先輩の最初のひと口を見届けると、「あー、ひおがハマるのわかる」と、どうやらお気に召してくれたようで、それがなんだか嬉しかった。


それから4人で購買のパンの話で盛り上がり、気がつけば昼休みが終わる10分前。仁先輩調べによると、購買人気ナンバーワンは焼きそばパンらしい。


そろそろ解散しようかというところで、仁先輩が自販機で飲み物を買ってから教室に戻る、と。それにあーちゃんもついて行ったため、由真先輩と私のふたりだけになった。

教室に戻ろうって話だったのに、先輩は席を立とうとしない。だから私も座ったまま、さっきまであーちゃんが座っていた椅子を眺める。先輩と隣同士。教室の机と椅子とは違うけれど、先輩と同じクラスになった気分だ。

教室まではギリギリ1分で着く距離で、先輩もほぼ同じだと思う。時間は、まだある。

何か話さなきゃ、というよりも、まだ話したい、そんな気持ちだった。



「……先輩」

「ん?」

「勉強、どうですか?」

「うん、順調だよ」

「それはよかったです」



最近は会うたびにそう聞いている気がする。今までは話題のほとんどが私の片思いについてだったのに、今は先輩の受験の話。

話を聞いてほしいよりも、話を聞きたい、が勝っている。



「なに、気にしてくれてんの?」

「当たり前で……あ……でもこういうのってプレッシャーみたいになりますかね……ごめんなさい、配慮が足りなさすぎました」

「全然、むしろ逆なんだけど」

「逆?」

「ひおがそうやって気にかけてくれると、頑張れる」



時が経てば変わる。あの頃の私たちとは、もう違う。