「やっほー! 連れてきたよー!」
「お邪魔します……」
目的地の扉を開けると、由真先輩の前の席に仁先輩が、長テーブルを挟んで向かい合って座っていた。
「お、陽織ちゃん花火ぶり〜」
「お久しぶりです」
先輩たちに会うのは花火大会の日以来で、1ヶ月は会っていない。だけど由真先輩とはメッセージのやり取りをしていたからか、思ったよりも久しぶりに感じなかった。
「お腹空いたー!」と、先にあーちゃんが座る。もちろん仁先輩の隣に座ったので、必然的に私は由真先輩の隣へ。
「何買ったの〜?」と前でキャッキャしているふたりを前にしながら、さっき買ったジャムパンといちごオレをテーブルの上へ並べていると、隣から視線を感じた。なんの躊躇いも無く素直にそちらへ向けば、由真先輩と目が合う。
「メロンパン売り切れてたの?」
「いや……そういうわけじゃ」
聞かれたら恥ずかしいなと思っていたそれをツッコまれて、目が泳いだ。どうしようと視線をゆらゆらと彷徨わせていると、先輩の目の前にメロンパンを発見する。先輩は逆に今日はジャムパンじゃないらしい。
「せ、先輩こそ、ジャムパンじゃなくてメロンパンなんですね」
「うん、ね。ひおが好きって言うから、食べたくなって」
「、え」
「……って、さすがに気持ち悪いか、ごめ、」
「お、同じ、です」
「え?」
「ジャムパン、先輩が好きって言うから……そんなに美味しいのかなって……気になって……」
偶然にも同じ気持ちだったとわかって、こちらも白状することにした。恥ずかしさが減った代わりに、胸の真ん中辺りがくすぐったい。紛らわすようにパンの袋を開けていると、向かい側から「フフフ」とふたり分の笑い声が聞こえた。
「仁、なに笑ってんの」
「いや? べつに〜」
「あーちゃんもだよ?」
「いやぁ〜、パン美味しいな〜って!」
しばらくふたりのニマニマは収まらなそうなので、気にせずにジャムパンを齧る。その味は確かに先輩が言っていた通りだった。甘さと酸味のバランスが丁度よくて、スーパーやコンビニのそれらよりも美味しい。
もしかしたらメロンパンよりも好きかもしれない、なんて思ってしまう程に。


