この場所で話すのもよかったのだけれど、せっかくなら久しぶりに、といつものところへ行くことにした。
ここからはまぁまぁ歩くけれど、先輩も私も家はそっち方面なので問題は無い。
あーちゃんに連絡をして向かった。仁先輩とのツーショット写真が返ってきて、こちらまで幸せな気持ちになる。ふたりで楽しめたようで何よりだ。
「わ〜! なんかもう懐かしいんですけど!」
いつもの場所──バイト終わりに先輩とよく来ていたあの公園。やっぱり今日も誰もいない。定位置に座って、周りを見渡してみる。
「最近来てないの?」
「来てないですね。先輩は?」
「俺も来てないかも」
ここに座ると、色んなことを思い出す。そのほとんどは、先輩に話を聞いてもらった時のことで。まさかその時は、今こんな気持ちで先輩とここに来ているなんてこと、少しも想像しなかったなぁ。
「てか時間大丈夫?」
「大丈夫です! 先輩は?」
「俺は大丈夫だけど、あんま遅くならないうちに帰ろ」
「わかりました」
残り時間は多くても1時間。夏の夜の空気を目一杯吸い込んで、ゆっくり吐き出す。それから先輩の方へ向いた。
「じゃあ、聞いてもいいですか?」
「うん、なんでもどうぞ」
私から先輩へ。質問タイムスタートだ。
「好きな食べ物は?」
「はは、そっから?」
「そうです、基本的なことからです」
「んー、カレー」
「じゃあ苦手な食べ物は?」
「無いかな」
「えーすごい! じゃーあ、好きな色」
「黒と青」
「好きな季節は?」
「春」
まるで、初対面のひと同士の会話みたいで。出会ってから1年以上経つのに、知らないことはまだまだたくさんありそうだ。


