それからどうにかりんご飴を買って、先輩が知っているという穴場へ向かう。去年家族とそこで見たらしく、ふたりで見るならそこへ行こうと言ってくれた。

もうすぐ始まってしまうのに、先輩は下駄を履いて早く歩けない私に歩幅を合わせてくれる。今日だけではない。思い返せば先輩は、いつも隣を歩いてくれていた。



「着いた」

「わ、確かによく見えそう」



到着したのは、始まるほんの数分前。ベンチしかない、小さな公園。知るひとぞ知る穴場なのか、確かにひとがちらほらといる。りんご飴を食べながら、始まるのを待った。



「もう始まりますね」

「うん、楽しみ」



先輩と並んで、空を見上げる。数秒後、光が空へのぼって、それは大きな音を立てて弾けた。



「わぁ……きれー……」

「ね、綺麗」



次々と打ち上げられる花火が胸に響く。思っていた何倍も綺麗で、喋ることを忘れてしまうくらい見入ってしまった。ただじっと、ふたりで夜空を見上げていた。

最後の1発が終わるまでずっとドキドキしていたような気がするけれど、それが花火のせいなのか、隣にいる先輩のせいなのかはわからなかった。

泣きたくなるような、寂しいような。終わった瞬間、そんなことを思って。



「綺麗だったね。去年よりすごかった気がする」

「はい……綺麗でした」

「戻ろっか? 仁に連絡、」

「先輩、もうちょっとふたりでいませんか?」



だからなのか。そんなことを言えてしまうのは。だけどやっぱり、それは間違いなく私の本心で。



「え?」

「……先輩言ってましたよね、私の全部を知ってるわけじゃないって。私も、先輩の全部は知らないから。だから、先輩のこと教えてほしくて」



知りたい。知っているようで知らない、先輩のこと。



「ん。じゃあ話そ」

「あーちゃんには、私から連絡しておきますので……!」



今日じゃなきゃ、だめだと思った。今日が、いいと思った。