人混みをかき分けて、道に出る。振り返るとちゃんと由真先輩がついてきていて安心した。
「りんご飴そっちだっけ?」
「こ、こっちにもあるかも……?」
そっか、これからどうしよう。まずはりんご飴を買って、それからどうやって時間潰そう。
いや、説明するべきだよね? 先輩のこと勝手に連れてきちゃったわけだし。
なんてぐるぐると考えていたら、先輩が「ふはっ」と笑った。
「えっ」
「ひお、りんご飴本当に食べたいわけじゃないんでしょ?」
「え」
「仁とあーちゃん、ふたりきりにさせてあげたかったんだよね?」
「あ……」
どうやら説明不要のようだ。私の魂胆はちゃーんと全部見抜かれていたらしい。
「やさしいねぇ、ひお」
「……だってせっかくの息抜きの日だし、あーちゃん浴衣着てるし……ふたりの時間あげたいじゃないですか」
「それは俺も思ってた」
「ですよねっ!」
「それにまぁ、俺もひおとふたりになりたかったから、ありがとうございますって感じですよ」
「、っ」
「どうしよっか、じゃあ」と、先輩は普通にしているけれど、どうしたって私は普通にはなれなくて。
不意打ちを食らって、決意する。
「……私も、です」
「え?」
「先輩のこと、ちゃんと知りたいなって……思ったから。だからこれは、ふたりのためだけじゃないです」
これも、本心だ。同じくらい、思っていたこと。
先輩ともっと同じ時間を過ごして、ちゃんと知ることが必要だと思った。だから今日、この花火大会はチャンスなのだ。だってもう先輩とは、気軽に会えるわけではないから。
隠しておくことだってできたけれど、先輩がそんなふうに気持ちを伝えてくれて。言わないでいるのは、違うのかなって。
「はぁ……ひお、それは反則じゃない?」
「えっ、あ……ごめんなさい」
「じゃありんご飴買って、ふたりで花火見よ」
先輩の提案に頷く。そうすれば先輩は、嬉しそう笑った。


