願うなら、きみが


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「アイス食べたい!」

「買ってくる?」

「じゃあふたりは留守番お願いね」



夏休みに入って1週間。例の勉強会があーちゃんの家で開催された。

あーちゃんの家には何回かお邪魔したことがあって、あーちゃんママとは普通にお話できるくらい仲良くさせてもらっている。親子そっくりで、可愛らしいママだ。今日も『陽織ちゃん久しぶり〜っ』と、あーちゃんそっくりの笑顔で出迎えてくれた。

ちなみに仁先輩とは2度目ましてらしく、すでに打ち解けていた。さすが仁先輩である。


先輩たちは受験勉強、私たちは宿題。集中して取り組むこと2時間、休憩中のお供を買いにあーちゃんと仁先輩はコンビニへ行ってしまった。


つまり今、由真先輩と私のふたりきりである。


会うのも久しぶりだし、さすがに緊張みたいなものはするわけで。ベッドの上にあるうさぎのぬいぐるみを見て、気持ちを紛らわせる。



「なんか久しぶりだね?」

「久しぶり、です」

「どう? 元気?」



そんな私の心情を察してくれたのか、まるでいつも通りに先輩は話しかけてくれて。

やさしさをもらってばかりではだめだって、この前みたいなのじゃだめだなって、ここで決心する。


視線をうさぎから先輩へ。しっかりと先輩の顔を見たのが、随分と久しぶりなように感じた。



「元気です……! バイトのみんなも元気です」

「それはよかった」

「先輩は?」

「元気元気」

「勉強大変ですか……?」

「そうだね。大変だけど、勉強嫌いなわけじゃないからなんとか頑張ってる」

「応援してます、とっても」

「ありがとう、頑張る」



大丈夫だ、ちゃんと話せている。そう思って先輩から目を逸らさないようにしていれば、突然「ふっ」と先輩の口から笑い声が漏れた。



「え……なんかおかしいこと言いました?」

「ううん、ごめんごめん。今日はすごい見てくるんだなって思って」

「い、言わないでくださいよ……! 恥ずかしいじゃないですか」

「ごめんって。もう言わないから、こっち見てて?」



さっきまでできていたのに、指摘された途端だめになる。

先輩との見つめ合いに勝てるひとなんて、果たしているのだろうか。