「俺の知らないところでひおがお前になんか相談しに来たとしても、絶対困らせないでね」
「それはうん、大丈夫」
「ならいい」
ひおが選んだ答えなら、なんでも納得する。だけどやっぱり、もっとちゃんと俺のことを見てほしいとは思ったりする。だってさっきの告白でやっと意識してくれた感じだと思うから。
「お前ってほんとさー、かっこいいよなー。ずるいわ。かっこいいのは顔だけにしろよ」
「褒めてんのそれ」
「褒めてるだろ。ま、俺からしたらやっっっと言ったかって感じですけどね」
「自分でもそう思う」
「でもさ、俺ら受験じゃん? 行事ももう無いし。お前バイトだって続けるわけじゃないでしょ?」
「うん、辞める予定」
「大丈夫? 接点無くなるんじゃん?」
そう、ひおにはまだ話していないけれど、来月に入ったらバイトを辞める。店長にはもう話してあって、ひおとシフトが一緒になるのもあと1、2回。
ひおには次にシフトが被った時に言うつもりだ。
「どうにかする。会えなくなるわけじゃないし」
「ま、なんかあったら協力するから言えよ?」
「ん、ありがと」
平然を装っているけれど、実は結構焦っていて。
3年はこれから先はもう受験モードだ。バイトも辞めるし、ひおと会えるのは学校しかない。
つまり、自分から会いに行かないと、ひおとは会えないというわけだ。
やばいな。早くも仁に協力してもらうことになるかもしれない。
「……頑張るしかないか」
「おっ! 頑張れモテ男!」
「うるさい」
アイスの最後のひと口を食べ終えて、空を見る。さっきまで雲に隠れていた月が、顔を出していた。
だけど思う。やっぱりひおの隣で見る月が、いちばん綺麗に見えると。
だから願わずにはいられなかった。またひおと一緒に月が見られますように、と。


