「で、どうだったわけ?」

「え?」



夜、打ち上げが終わって仁との帰り道。アイスでも食べるかと、コンビニで買って近くの公園のベンチに座った。

それから突然なんの脈絡もなく聞かれる。適当な返事をしてしまったけれど、なんのことだかはわかっていた。



「とぼけんな。陽織ちゃんのことに決まってんじゃん」

「……」

「なに、もしかして黙秘?」

「いや、」

「はーーー、さっきだって女子たちに聞かれたわけ。〝由真何引いたの!?〟〝あの後輩の子誰!?〟って。それをうまーくかわした俺にそんな態度取っちゃう?」



仁とは離れた席に座っていたけれど、薄らとそんな会話は聞こえてきていた。誰も俺に直接聞いてこなかったから、きっと仁が全部受けてくれていたのだろう。普通に悪いとは思っている。



「……それは感謝してるし、お前にはちゃんと話すつもりだったから安心して」

「じゃあ早く教えて? 気になってしにそうなんだけど?」



帰り道に話すつもりではいた。だけどどう切り出したらいいのかわからずにタイミングをうかがっていたので、正直仁から振ってくれてありがたい。



「……ちゃんと伝えた」

「まじ!? で? 返事は!?」

「返事は待ってる」

「待ってるって? いつまで?」

「さぁ……卒業までかも」

「え、卒業? 遠くない?」

「考えてくれるだけありがたいでしょ」

「ちなみに借り物競争、引いたのは?」

「……」

「おい」

「…………〝好きなひと〟」

「はーーーっ、お前、まじかよー」



「青春かよ」と、誰よりも青春を謳歌している男にそう言われて、笑ってしまいそうになった。

どんな結果になろうと、今日のことはきっと俺の中の青春の1ページってやつに刻まれるのだろう。