──「あ、来た来た! どこ行ってたの〜!」



あれから少しして、先輩と別れた。『またバイトでね』と、いつも通りに。

教室へ帰ると、あーちゃんがひとりで待ってくれていた。あーちゃんの方が早く終わったらしく、5分前に【どこー?】と来ていたメッセージに今気がついた。



「ごめんごめん……ちょっと……」

「てかさ、さっきのやつ由真先輩まだ教えてくれないのっ? ちょー気になるんだけど!」

「……」

「ん? どした?」

「……どうしよあーちゃん〜〜〜っ」

「えっ!? なになに!?」



早くあーちゃんに相談したい、と思っても、最初になんて伝えたらいいのかわからなくて。おまけにあーちゃんの顔を見たら、なぜだか涙腺が緩んでしまって。悲しいわけでもないのに、涙が出た。

心配してすぐ隣まで来てくれたあーちゃんに、さっきの出来事を話す。あーちゃんは「そっかそっか」と背中をさすってくれて、話し終わる頃には涙は引っ込んでいた。



「落ち着いた?」

「うん、ありがと……」

「いやぁ〜、正直、由真先輩の気持ちはなんとなくわかってたんだよねぇ」

「えっ……そうなの?」



ちょっぴりニコニコしているあーちゃん。たしかにあーちゃんは、そういうことに鋭そうだ。



「見てたらわかるよ〜先輩陽織にだけやさしいもん」

「そう……なんだ……」

「まさか今日告白するなんて思わなかったけど! 借り物競争だって、それもう漫画のやつじゃん!」

「ね……びっくりした」

「まぁ、時間もらったならゆっくり考えてみなよ」



ゆっくり考える。私にとってはありがたいけれど、先輩にとっては、きっとそうじゃない。

だって先輩を待たせるということは、先輩の時間を奪うってことだから。


わかっている。大事に考えることと時間をかけることは、必ずしもイコールではないということ。

そもそも考えるって、何をどう考えたらいいのだろう、と。次々と色んなことが頭をぐるぐると埋め尽くす。


……答え、ちゃんと出せるのかな。




結局打ち上げの時間まで、上手く言葉にできないような気持ちをあーちゃんは聞いてくれて。それでもやっぱり、頭も胸もいっぱいで。

打ち上げのお好み焼き食べ放題は、ちょっとしか喉を通らなかった。