いつになるかはわからないけれど。先輩のことは、何よりも真剣に、大事に考えなければならないと思った。
それが、今まで先輩がしてきてくれたことへのお返しだと思うから。
「なに、もしかして考えてくれるの?」
「……考える」
「え、ほんと?」
「当たり前ですよ」
「やった、うれしー」
「でも、いっぱい時間かかるかもしれなくて」
「うん、待ってる。ゆっくりでいいよ」
こうやってまた、私は先輩のやさしさに甘えてしまう。
「……先輩は、やさしすぎます」
「そう?」
「甘やかしすぎですよ」
「でも実は、やさしくないんだよ」
「え、そんなこと、」
「だって俺、ひおのこと騙してたから」
「え……」
「ひおの恋、話聞いて偉そうなことだけ言って。だけどこころの中では、応援なんてできてなかった。ずっとふりだった」
先輩がまた、〝ごめんね〟の顔をする。首を横に振ってみせたけれど、先輩も同じようにそうした。
応援するふり、幸せを願うふり。
『……ごめん、星谷くん』
『なんで謝るの』
『だって……私、本当は最低だから』
『どこが、』
『星谷くんの幸せを、こころの底から願ってなかったから』
先輩の気持ちがわかる。同じだったから、わかる。
そうやって少しでも、近くにいたかった。ずるいことだとわかっていても、そうするしかなかった。
「好きな子の幸せなんて願えなくて。俺の方向けばいいのにって、ずっと思ってた。ごめんね、ひどくて」
怒りも絶望も無い。だって、先輩が今何を言ったって、私の受け取ってきたものが全てだから。
「それでも私は、先輩がいなかったらだめでした。たとえ全部の言葉が本心じゃなかったとしても、先輩に助けられたのは事実です」
「でも、」
「私の中で先輩は、どうしたってやさしいひとです」
だからそれは、紛れもなく本当のことだ。


