「さすがにもう信じた？」
「……ライクじゃなくて、ラブ？」
「当たり前でしょうが」
「ほんとに……？」
「ほんと」
わかっている。でも何か喋っていないと、胸の辺りがそわそわして落ち着かない。
ありがとうございます、だけじゃだめなのももちろんわかっているけれど、じゃあ他になんて言ったらいいのか言葉が見つからなくて。
それがきっと顔に出ていたのだろう。先輩は笑って、また「ごめん」とこぼした。
「でも、今すぐどうこうなりたいとかじゃないよ」
「え……」
「だってひお、俺のことそんなふうに見たことないでしょ？」
「は、はい……」
「もしひおが俺のこと考えてくれるなら、その後で返事ちょうだい？」
その提案はたぶん、今の私にいちばんしっくり来るものだ。
どうして先輩はいつも、私が欲しい言葉がわかるのだろうとずっと思っていた。きっとそれは、先輩がずっと私のことを見てくれていたからだ。
「どう？」
「先輩がそれでもいいなら……それがいい、です」
「ありがと。でも、100パーセント可能性無いなら、今ここで断って？」
「え」
「そこは気遣わないで大丈夫だから」
選択肢を与えられて、脳内会議を開く。どうだろう。可能性は、100パーセント無い？
たしかに先輩とお付き合いをするなんて、今は全く想像ができない。
だけど少しも考えないまま、ここで答えを出していいの？
私にとって由真先輩という存在は、ここですぐに答えを出せるほど軽いものじゃない。先輩の真っ直ぐな気持ちには、きちんと同じだけの重さで返したい。
もしそれで、先輩を悲しませてしまう答えしか出せなかったとしても。
「…………まで」
「ん？」
「いつまで、待ってくれますか？」
「待ってるよ、いつまででも」
「例えば……先輩が卒業するまででも……？」
「はは、全然余裕」
先輩は、やさしい。だけどきっとこのやさしさは、当たり前のものじゃない。
