願うなら、きみが






考えてみる。パッと思いつくものは、たったのひとつしかない。



「うーん……バイトが同じひと?」

「はは、そんなん引いたらみんな大変だよ」

「だって! 私じゃなきゃだめなやつ、これしか思い浮かばないです」



どうやら違うらしい。これは難問だ。でもそれ以上は何も思い浮かばず、先輩も教えてはくれず。考えている間にみんなが無事ゴールできたため、タイムアップ。一緒に駆け足で退場した。


結局正解をくれないまま「残念、また今度」と、席に戻る前に先輩にそう言われた。先輩のジャージのポケットに手を突っ込む勇気はもちろん無かったので、次会う時までに考えてみることにする。あまりにも難しすぎる宿題だ。

……そもそも、そんなに勿体ぶらなくてもいいのに、とか思ったり思わなかったり。先輩には言わないけど。



「おかえり〜っ!!!」

「ただいま」

「ねーっ、なんだった? 紙に書いてあったの!」



席まで戻れば、あーちゃんがきらきらと大きな瞳を輝かせて顔を覗き込んできた。しかし残念なことに、今は期待通りの返事はできないのである。



「それが……先輩教えてくれなくて」

「えっ! も〜っ、そう来たか〜!」



だけどあーちゃんはこの問題が解けているからか、非常に楽しそうだ。どうして私にはわからなくて、あーちゃんにはわかるのだろう。先輩との関わりはあーちゃんより多いのに。それもまた謎である。



「あーちゃんわかるなら教えてよう」

「え〜っ、先輩から答え聞いた方がいいと思うよ?」

「ふたりとも意地悪だぁ……」

「まぁまぁ」



気になる。でもあーちゃんも教えてくれないらしいので、ひとりで考えるしかないみたいだ。