先輩はどうやら最後の組らしい。どの団も点差はギリギリで、いちばん盛り上がっているところで最終レースへ。

でも今のところ、あーちゃんの言っていた〝物じゃないやつ〟は出ていないような気がする。



「ねぇあーちゃん、普通の借り物競争っぽいけど……」

「いーや! たぶんここで出るよ」



そうは思えないなぁ、と思っていればスタートの合図が鳴った。走り出していちばん最初に紙を拾った先輩は、中身を見つめながら立ち止まってしまった。その間に他のひとたちが次々紙を拾っていく。



「ほらほら! 見て!」

「え」



あーちゃんの指差す方向には、走者が男子生徒を連れている。あーちゃんの言っていた通りだった。どうやら最後だけ、借り物ではなく借り人競走らしい。たしかに、みんな誰かを呼んで一緒に走っている。



「先輩、何引いたんだろっ」

「ね、難しいお題なのかな? 全然動かない」



相当難易度が高いのか、せっかく最初に紙を手にしたのにどんどん周りのひとたちがゴールをしていく。ちょっと心配だ。

だけど誰かを思いついたのか、先輩はようやく紙から視線を上げて動き出した。

どんなお題だったのか後で教えてもらおうと、先輩の行く先を目で追っていれば、先輩と目が合った。

だから〝頑張れ〟と口にしようとしたのにできなかったのは、先輩がこちらに向かって走ってくるからだ。



「ねね、あーちゃん、なんか先輩こっち来てない?」

「ははーん、なるほどね。やっぱりやばいやつ入ってたんだ〜っ」

「え、どういうこと?」

「ふふん、わかっちゃったぁ」

「えっ?」

「先輩が何を引いたのか」



あーちゃんが楽しそうにそう言うから。教えてほしくて聞こうとしたのに、それもできなかった。


だって──






「ひお、来て」