「漫画みたい」
「え?」
「八代さんとバイト一緒の先輩」
「あぁ……ね、囲まれてたね」
「八代さんは違う理由であのひとたちに囲まれそうだけど」
「え、なにそれ」
「気をつけなよ」
「だから何、」
「あ、そろそろ入場だよ」
結局それがどういう意味なのかはわからなかった。だけどそれよりも、だんだんとリレーが始まることへの緊張に襲われてしまい、緊張感MAXのまま入場。八田くんに「大丈夫大丈夫」と言われながら自分の番を待った。
とりあえず今は、目の前のことに集中しなければ。
──「お疲れ」
「ほんっっっとにありがとう……!!!」
「どういたしまして」
あっという間の時間だった。終わってしまえば、全てのものから解放された気分になる。八田くんが直前まで私に声をかけてくれたおかげで、次第に緊張は解れ、転ぶこともなくしっかりと走り終えることができた。
……まぁ、抜かされてしまったのだけれど。
でも言ってくれた通り、その後八田くんが、私が抜かされた分だけ抜き返してくれて。
接戦の末、最終的には2位という結果に落ち着いた。
バトンパスも練習したおかげで上手くできたと思う。こればかりは、全部八田くんに感謝である。
これで私の出る競技は終わりだ。ちなみに午前中にやった棒引きでは、全く戦力になれずに結果もボロ負けだった。
あとはみんなを応援するだけ。なんて気楽なのだ。席に戻って、プログラム表を確認する。
「わ、次借り物競争だって! 楽しみ!」
「仁先輩出るの?」
「ううん、出ない! でも今年のお題、やばいの入ってるって噂だからさ〜っ」
「やばいの? とは?」
「物じゃないやつだよう」
「んん……? 物じゃない?」
「そーそー……ってあれ? 由真先輩じゃない?」
「あれ、ほんとだ」
入場してきた生徒の中には先輩がいた。あれれ、借り物競争に出るとは言っていなかったと思うのだけれど、私の勘違いだろうか。


