*.




「これは焼けるね〜」

「ね、日焼け止め塗り直さないと」



あっという間にやって来た体育祭当日。雲ひとつ無い青空が広がっていて、日差しが暑い。こまめに日焼け止めを塗り直さないと、夏前なのに焼けてしまいそうだ。


生徒用の観覧席で、あーちゃんと隣同士に座る。今日もあーちゃんに髪の毛をやってもらって、お揃いのポニーテールだ。



「ねぇねぇ見て! さっきの仁くん!」

「わ、かっこいいねぇ。よく撮れてる」

「だよね!? でもなぁ、もっと近くで見たかったーーー!」



午後いちばんに応援団の応援合戦があって、場所を移動してなんとか正面から見ることができた。そうまでしたのは、仁先輩が我々白組の応援団で、しかも副団長だからだ。私とあーちゃん同様、先輩たちも今年も同じクラスになったので、今日はみんな仲間である。

あーちゃんのカメラロールには、仁先輩の写真が大量だ。もうすでに100枚は越しているのではないだろうか。学年が上がっても、ふたりの仲良しぶりは健在である。



「あ、次騎馬戦だよ! 由真先輩出るんだよねっ?」

「うん、そうみたい」



生徒席の方ではあーちゃんがいちばん前を陣取ってくれたので、全部の競技をすぐ近くで見ることができている。3年生にとっては最後の体育祭ということもあり、あーちゃんの気合いはすごい。



「先輩どこだ〜? 陽織見つけて〜!」

「あそこにいるよ」

「ほんとだ! はや!」

「だって先輩目立つもん」

「そうだけどさ〜」



1年生から3年生の男子が群がっている中でも、先輩のミルクティー色は目立つから。たくさんのひとがいたって、すぐに見つけられる。私の視力が特別いいわけではない。


先輩へのそわそわした気持ちはというと、実はもう今では結構落ち着いてきている。体育祭までの数日、シフトが被ってなんでもない話をたくさんしていたら、いつの間にか大丈夫になったのだ。


ほっとした。いつも通りの私に戻れて。だって先輩とは、これからも純粋に楽しく話していたいから。

あれはたぶん、びっくりしたことによる一時的なものだったのだろう。