「先輩先輩」

「んー?」

「あの、その後はどうですか?」

「その後って?」

「先輩の……その、好きなひとと……」



「あー、それね」と、先輩は手に持っていた制服をテーブルの上に置いて、椅子に座った。そしてそのまま見上げてくるので、それはもうすごい破壊力である。

このまま見つめられたらさすがに私でも心臓に来てしまいそうなので、平気なうちに向かい側に座った。先輩の上目遣いはあまりにも攻撃力が高すぎる。



「じゃあ、ひおに相談してもいい?」

「えっ、してください! なんでも!」



何か話してくれるかな、と少しばかり期待をしていれば、なんとびっくり。先輩からそう言ってくるとは思わなくて、やや食い気味に答えてしまった。

私を頼っているわけではないと思うけれど、先輩のこういうのは珍しいから。話すことで少しでも先輩の気持ちが楽になればと、その一心だった。



「なんでも?」

「はいっ、なんでもです!」

「じゃあ聞いてくれる?」

「喜んで!」

「俺の好きな子ね、この前失恋しちゃったんだよね」

「え……」



ここでようやくわかった。『俺も、ほぼ100パーセント叶わない恋かな』と言った先輩の言葉の真相が。

好きなひとに好きなひとがいる。それさえも先輩と私は同じだったというわけだ。



「で、たぶんもう引きずってはない感じなんだけど、俺はその子にぐいぐい行っていいと思う?」

「えっと、今まではどういう感じだったんですか? ふたりの関係というか……」

「んー、見守ってたかな、その子の恋を」

「なるほど。うん、いいと思います! ぐいぐい!」

「そう?」

「だって失恋の傷を癒すのは新しい恋とかなんとか言うじゃないですか」



同じだったから、私に自分を重ねていたのだろうか。だから私にうんとやさしくしてくれるのかな。

そんな先輩の背中を、ちょっとでも押してあげたい。