そういうの、全く興味無さそうなのに。だけどそう聞いてくるくらい、やっぱり先輩は目立っていたということだ。


とりあえず、訂正しておかなければ。



「違う違う、彼氏じゃないよ。バイト同じなの。シフト被った時に一緒に出勤してただけで……」

「なんだ、そうなの」

「そうそう、ただの先輩後輩だよ」

「仲良いんだね」

「うん、仲良しだとは思う」

「じゃあ、恨み買わないように気をつけた方がいいんじゃない?」

「え」

「ほら、ああいうひとって密かにファンクラブとかありそうじゃん」

「……ファンクラブは無いと思うけど、たしかに」



八田くんの言う通り、先輩の周りには先輩に好意があるであろうひとがたくさんいる。去年先輩の教室を覗いた時、それをとても実感したことを思い出す。女の先輩たちの視線、すごく刺さっていたなって。



「ま、わかんないけど頑張れ」

「適当だね?」

「あ、そろそろいいかも」

「え?」



周りを見渡す。話している間に、教室からはひとがいなくなっていた。

ついに、これから八田くんと謎の時間が始まるのだ。なんとなくお説教……ではない気がしてきたけれど、じゃあ一体何をするのだろう。結局聞けないままここまで来てしまった。



「よし、廊下出るよ」

「え……廊下?」

「うん」

「あの……何をする気でしょう……」



どうやら会場は教室ではないらしい。ますますわからなくて、とりあえず聞いてみる。



「いいから早く。大したことじゃないから」

「ええ……」



それはもう、大きなはてなマークだ。だけど八田くんは教えてくれないようで。

席を立って教室のドアへ向かう八田くんを追いかけるしかなかった。