最後の授業を終えて、あっという間に放課後。あーちゃんに別れを告げて再び自分の席へ。「何をするのでしょう」と聞いてみたのだけれど、「もうちょっとひといなくなったら」と、八田くんがそんなことを言うので仕方なくその通りに待った。



内心、バクバクである。人気の少ない教室で、一体何をするのだろう。もしかしてさっきの練習への説教? そんなことをわざわざ? さすがに違うだろうと思っても、それ以外他に思いつかない。


教室からはどんどんひとが減っていく。みんな行かないでと思う。はーあ、今日バイトあればよかったのに。どうして空いているなんて正直に答えてしまったのだろう。

なんて思いながらちらり、横を見る。今の八田くんは特に不機嫌ではなさそうだ。

スマホに夢中の八田くんは、私の視線に気がついていない。なのでそのまま観察をすることにした。

クラス替えをしてまだ間もない。八田くんの顔をこんなにまじまじと見るのは、当たり前だけれど初めてだ。

わぁ……睫毛が長いし横顔も綺麗だ。それに黒髪もサラサラ。私なんかよりもよっぽど綺麗な髪である。

いいなぁ、と眺めていると、八田くんのお顔がこちらへ向く。それからぱち、と目が合ってしまった。



「……なに」

「、あ、いや……」



やばい、せっかく機嫌悪くなさそうだったのに。何も言わずにじっと見つめていただなんて、気持ち悪い女認定されてしまう。

なんてびびっていたのだけれど、八田くんは予想とは違って、普通の顔で「そういえば」と首を傾げた。



「今日大丈夫だったの?」

「え……?」

「ほら……彼氏? 先輩だよね? 時々迎えに来てなかった?」



その上そう聞いてきたので、瞬きを何度か繰り返す。八田くんがそんなことをわざわざ聞いてきたということにびっくりした。