由真先輩は、あのバレンタインのことがあってから、私に対して更にやさしくしてくれるようになった気がする。元々〝超〟が付くほどやさしいのにだ。


例えば、今日みたいにバイトのシフトが被った日は、放課後に教室まで迎えに来てくれたり。

この前は『美味しいもの食べに行こう』って誘ってくれて、インスタに出てきそうな可愛いカフェにあーちゃんと仁先輩と4人で行ったり。

ホワイトデーには、『お返しあげる』とか言って色んな味のキャンディをくれたり。


やさしい、というか、過保護というか。ホワイトデーに関しては、行き場を失ってしまったものをあげただけで、ちゃんとしたものは何も渡せていないのに。


本気で心配してくれているのだろうなぁ、と思う。私が妹さんと重なって見えているのなら尚更。

だから申し訳ないのだ。だって先輩にとってはなんのメリットもないから。私に無償のやさしさをくれることが。



「先輩」

「ん?」

「バイト、ひとりで行けますよ」

「そう?」

「そうです。今までだって別々に出勤してたじゃないですか」

「まぁ、そうね」

「あれですよね、心配してくれてるんですよねっ? でももう大丈夫ですよ、私」



完全に大丈夫かと聞かれたら、そうではない。〝星〟って字を見ただけで、ちょっとぐらぐらしちゃうし。

だけどほとんど大丈夫になってきたのは事実だ。それは毎日一緒にいてくれるあーちゃんや、こうしてやさしいをくれる先輩のおかげだ。



「そっか、ならよかった」

「先輩、ありがとうございます。私、ちゃんと元気です」

「ひおが元気ならよし」



大丈夫の意味を込めて、先輩に笑いかける。そうすれば先輩も笑った。


だけどちょっと寂しそうな顔に見えるのは、どうしてだろう。