会うたびにほとんどいつもお菓子やらジュースをくれる先輩。そこに見返りや下心はなく、ただただ、やさしい先輩だ。
仲良くなるにつれて、自分の話をするようになって。ある時休憩室で本を読んでいるのを見られて、その流れで話した。
私の、片思いの話を。
その時も『うんうん』って、私の好きな先輩のやさしい声のトーンで聞いてくれた。
先輩は星谷くんのことも、星谷くんが好きなのが朝倉先生だってことも知らない。
ただ私の話を、やさしい相槌と共に聞いてくれる。ちょっとくじけそうになった時には、こうしてここに連れてきてくれる。
先輩に話すだけで、もやもやがすーっと溶けていく気がして。だから私も先輩に何かあれば力になりたいなんて、何もできないくせにそれだけはいつも思っているんだ。
「で、どうしたの」
「あー……へへ」
「へへ、って。なに、元気ならいいけど」
「元気です。いつものですよ、ほら。全然脈なくて、ちょっと悲しんでただけ」
「なに、なんか言われたの?」
「まぁ。ぐさーって、刺されましたね」
ナイフで自分の心臓の辺りを刺すジェスチャーをする。もちろん痛くない。でも、先輩は痛そうな顔をして目を細めた。
「そんなに刺されちゃったの」
「いや、でも嬉しいことも言われました。私と付き合ったら楽しそうだって」
「楽しそう、ねぇ」
「だけどその後、〝そんな日は来ないから安心して〟って言われちゃいました、はは」
「うわ、それは完全に刺されてる」
「そんなの、言われなくてもわかってるよ、って感じです」
昨日の会話を思い出して、またほんの少しだけ胸が痛んだ。
うん、知ってるよ。だって見てるから。
あのクラスの中で、学校の中で。きっと誰よりも星谷くんのことを見ているのは、私だから。


