願うなら、きみが






何度でも思う。私が今こうしていられるのは、間違いなく先輩のおかげだってこと。



「先輩、ありがとうございます」

「なんもしてないよ」

「してます! 今日だって、無理して来なくて大丈夫なのに」

「なんでよ。全然無理してないよ」

「だって……せっかくの放課後なのに」



だから申し訳なくなる。私は先輩に何も返せていないから。こうして付き合ってくれたって、先輩にはなんの得にもならない。



「美味しいお菓子食べたいから来てるだけ」

「ほんとに?」

「まぁ、それだけじゃないけど」



先輩は立ち上がって、キッチンへ。その背中に聞こえるように、「他にはなんですか?」と問う。すぐに戻ってきた先輩の手には、1リットルのオレンジジュースのパックが。これは先輩が来る時に買ってきてくれたものだ。


空っぽのコップにオレンジが満ちていく。ふたつのコップに同じくらい注がれた後、先輩は口を開いた。



「ひおがずっと願ってたことが叶うかもしれないんでしょ? だったらそれ、最後まで見届けさせてよ」



結末なんてわからないのに。いつも思う。先輩が見守ってくれていると思うだけで強くなれるような気がするのは、どうしてだろう、と。



「ひお」

「、はい」

「よかったね」

「な、なんですか先輩、もしかして泣かせようとしてる?」

「はは、こんなんで泣いちゃうの?」

「だって先輩がやさしいから」

「ね、俺ずっと、ひおのこと甘やかしすぎたかも」



「その役目、そろそろ別のひとにバトンタッチしないと」と、そう言われてほんの少し寂しくなるのは、きっと贅沢だ。



もしも、万が一、私の願いが叶ったのなら。今度は私が、先輩が誰かに向けている願い事が叶いますようにって誰よりもお願いするし、誰よりも応援したい。


先輩が今までずっと、私にそうしてくれたように。