──「先輩! 聞いて!」

「どうした」

「あの、好きなひとと色々ありまして」

「色々?」

「はいっ、へへ」



バイト中、暇な時間に由真先輩の元へ。星谷くんとのこと、まだ先輩に話せていなかったから。あと、クリスマスのことも言いたくて仕方がない。

だけどさすがにこの時間に全部を話すことはできそうもないので、バイトの後に時間をもらうことにした。


話すのが楽しみで、残りの時間いつもより頑張れちゃったりして。これぞ、好きなひとパワーってやつだ。





「視野を広げてみるって、私のことも見てくれるって言ってくれたんです」

「おお」



そしてバイト後、約束通りいつもの公園へ。ブランコを揺らしながら、まずは水族館での出来事を1から話した。

寒いので早く切り上げなきゃという気持ちはあるけれど、言葉がペラペラと出てきてしまう。それなのに先輩は「うんうん」と、やさしく聞いてくれた。



「しかもしかも今日、クリスマス一緒に過ごす約束しちゃいました」

「え」

「すごくないですか?」

「うん、すごいじゃん」

「ですよね? 浮かれますよね?」



「よかったね、ひお」と、冷たい冬の風と一緒にやさしい声が右側から届く。本当によかった。だけどそれは、先輩のおかげでもあると思っている。

だって先輩が、〝諦めなくていいんじゃない〟と言ってくれたから。それが今の奇跡みたいな出来事と引き合わせてくれたのだと思う。



「てか、初デートできたじゃん」

「あ」

「好きなひとと。それもよかったね」



そういえば前に先輩が、好きなひととデートできるといいねって言ってくれたことを思い出す。その時も先輩はやさしかった。先輩がお祈りをしてくれたおかげで、それが叶ったのかもしれない。

でも──



「いや、水族館のは、ノーカウントです」

「え、なんで?」

「そりゃあ私の中ではデートって気持ちだったんですけどね……! でも、よく考えたら相手はそう思ってなかっただろうから……だから、まだ初デートじゃないです」



星谷くんが、ちゃんと〝デート〟だと思ってくれるまで。



「そういうもの?」

「私的には? なのでいつかその日が来たら、また先輩に報告させてください」

「じゃあ、楽しみにしてる」



私はまだ、先輩に見守っていてほしい。というか、そうしてくれなければ困ってしまう。