突然のことに、頭が追いつかなくてびっくりしている。もう嬉しいを通り越して、なんだか泣きそうだ。あの日から1ヶ月、昨日まで特別なことは何もしていないし、本当に普通に過ごしていただけだから。まさか星谷くんがそんなことを考えていたなんて、少しも思わなかった。


告白をした後悔が大きかったけれど、たった今、それが消えようとしている。だって私、星谷くんの逃げ道になれるかもしれないから。



「よ、かった……」

「え?」

「星谷くんが……前を向こうとしてくれて」

「うん」

「それと……ものすごく、嬉しい、です」

「うん……だから今日、誘った」



これって、ちょっとは期待してもいいのかな。むしろ、期待しない方が無理なのでは?

星谷くんの瞳を覗く。今その中に映っているのは、たったひとり、私だけ。もしかしたらこの瞬間がずっと続く未来があるのかもしれないと、そんなことを思ってしまう。



「ごめん。今更だし、何様って感じだし、めちゃくちゃ勝手でほんと…………ごめん」

「ううん、そんなことないよ」



だけど私は知っている。星谷くんがどれだけ先生のことを好きだったのか。だっていちばん、誰よりもその気持ちを隣で聞いてきたのだから。

だからこれは先生を早く忘れるための星谷くんの強がりかもしれないし、きっとまだそのこころの真ん中には先生がいる。それはわかっている。


でも、星谷くんが面と向かって私に伝えてくれたのだから。私のことも見てくれると、そう言ってくれたのだから。


私はもう、星谷くんの前向きな気持ちにだけ目を向けよう。


可能性が0でなくなった。これだけでも、かなりの前進だ。



「ありがとう、星谷くん」

「え……何が」

「伝えてくれて、ありがとう」

「それは八代が、こんな俺に気持ちを真っ直ぐ伝えてくれたからだよ」



途中、ミルクティーの味がしなくなったのは、悲しいからじゃない。

嬉しくて胸がぎゅっとなって、このままどうにかなってしまいそうな。いつまでもこのときめきが続けばいいのに、と本気でそう思った。