──「どっちの色がいいかな……?」

「うーん、今日の顔的にはオレンジ系かな〜」

「じゃあそうする!」



放課後、ちょっとだけ星谷くんに時間をもらって、今あーちゃんに可愛くしてもらっているところだ。

元々薄く化粧はしているけれど、ほんの少し濃くした。リップの色をあーちゃんが選んでくれて、髪の毛もゆるく巻いてくれた。



「よし、可愛い! 似合う!」

「わーい! あーちゃんありがとう……!」

「はーあ! 陽織が楽しめますように!」

「はは、もうすでに楽しいよ」



気合いを入れていると思われるだろうか。だけどそれは仕方ないよね。だって好きなひとと放課後に出かけるんだよ?


鏡に映る自分を見てにこにこしていたら、あーちゃんに頭を撫でられた。鏡の中で目が合って、その瞳は〝大丈夫?〟と私に問いかけているような気がした。


思い出す。星谷くんに振られたことを報告した時のことを。あーちゃんはずっと背中をさすってくれて、私と同じように悲しんでくれた。

もしかしたら今も、振られた相手とこうしてお出かけをすることを心配してくれているのかもしれない。

だけど私のこころは無事だし、なんならめちゃくちゃ楽しみにしているし、ほんの少しばかり浮かれている。なので、大丈夫だよという意味を込めてにっこりと笑ってみせた。



「なーに陽織、かわいー」

「んーん、あーちゃんありがとうーって」



鏡の中のではなく、本物のあーちゃんの方を向いてそう言えば、ぎゅうっと抱きつかれた。「楽しい放課後になりますように〜っ!」と、おまじないのような言葉をくれて胸が温かくなる。



「ふふ、お土産買ってくるね」

「やったー! 楽しみにしてるっ」



今日はただ純粋に楽しもう、と。あーちゃんと別れてから星谷くんの元へ向かう足取りは軽かった。